「街がにぎわって、観光も雇用も増えるなら、いいじゃない。」
「大人が自分の責任で楽しむ自由は、認められていい。」
「『経済効果と雇用のため』── ええ、ついでに、答え合わせが開業のあとにしか来ない気楽さもね。」── そこまで計算してる
同じ「賛成」でも、見ている世界はこんなに違う。
そして「経済効果と雇用」という言葉は、たいていいちばん深く読む人が考えて、いちばん何も知らない人に向けて作られている。
身近に観光やリゾートの仕事があって、誘致でにぎわう街を見てきたから。
海外旅行でカジノを併設するリゾートに行って、楽しい経験をしたから。
自分の地元にカジノが来れば、雇用や来街者が増えて、生活も少し回ると思うから。
観光や宿泊の業界が動けば、自分の業界にも仕事が回ってくると思うから。
世界の主要都市の多くにカジノがあるのに、日本だけ閉じているのは時代遅れだと思うから。
大人が自分の責任で楽しむ自由は、認められていいと思うから。
人口が減る町は、町の中の財布だけでは支えきれない。外のお金に来てもらう柱を作るのは、好みの話ではなく、算数の話。
誘致が決まった瞬間から、土地・建物・観光の仕事がまとめて動き出す側だから。
「経済効果と雇用」と言いながら ── 効果の数字は誘致の前に語られ、依存症や治安の数字は開業のあとにしか出ない。答え合わせの前に決めさせる、この順番こそが一番の武器。
「新しい挑戦を歓迎する人」でありたいから。
観光や成長を大事にする仲間と、考えを合わせたいから。
賛成と言えば、「感情ではなく数字で決められる人」として扱われる。心配する声を「気持ちの問題」と整理できる側の席は、居心地がいい。
このままだと、自分の街がさらに沈んでいく景色が、こわいから。
人口が減っていく中で、新しい産業の柱がない未来が、不安だから。
「海外はあれで観光客を呼んでいる」という土産話に、感心して聞き入ってきたから。
「誘致で町が変わる」と盛り上がる集まりで、水を差す役は引き受けにくい。盛り上がりも、頭数でできている。
身近で、依存症で家庭が壊れた話を聞いてきて、これは増やしてはいけないと感じたから。
自分の街にギャンブルの場が増えて、治安が悪くなる経験を、近くで見てきたから。
自分の街にカジノが来ると、治安や子どもの環境が悪くなるのは、率直に嫌だから。
観光客は増えても、地元の人の暮らしのコストが上がるだけだと思うから。
人を不幸にして儲けるような産業を、国の柱にしてはいけないと思うから。
短期の経済効果のために、社会の弱い人にしわ寄せがいくのは、間違っていると思うから。
カジノの売り上げは、誰かが負けたお金の合計でもある。町に来るのは新しいお金ではなく、新しい負け方かもしれない。
客とお金が巨大な施設に吸い寄せられた分、減るのは町の店の取り分だから。
「依存症が心配」と言いながら ── その心配自体は本物。だからこそ、客を取られたくない商売や、正しさで票を集めたい政治の、一番よく走る乗り物になる。
「弱い側に立てる人」でありたいから。
家族や地域の暮らしを大事にする仲間と、考えを合わせたいから。
反対と言えば、「お金より人を選んだ人」として扱われる。それは、まず責められることのない席でもある。
自分の家族が依存症になる景色が浮かんで、こわいから。※「不安だから動きたい」という感情のかたちは、賛成側とまったく同じ。向きが違うだけ。
町の雰囲気が荒れていく未来が、不安だから。
「カジノはちょっとね」という苦笑いの輪に、自分も苦笑いで加わってきたから。
依存症の特集を見た夜の「こわいね」に、「でも税収には」とは返しにくい。返さなかった夜の分だけ、反対が自分の意見になっていく。